雨に濡れた香港の夜と温かい粥一杯
香港に到着するやいなや、空に穴が空いたかのような激しい雨が降り注いだ。傘を差しても全身が濡れてしまうほどで、まさに濡れネズミ状態だった。冷たい雨の中をしばらく歩き回り、ようやく地下鉄の駅構内にある点心店に駆け込んだ。席に座るとすぐに、湯気が立ち上る蒸し器の点心と、甘辛いタレがかかった腸粉、そして温かいお茶が運ばれてきた。

蒸したてで黄色い点心を一口頬張ると、ぷりぷりのエビの食感と温かさが体中に広がった。雨に濡れて冷え切っていた体が、一瞬にしてほぐれていくようだった。夢中で点心を平らげ、雨の香港での最初の食事を大満足で終えた。
ゴキブリとの遭遇、そして夜の街のレース
夜が更けるにつれて雨は止む気配を見せず、さらに悪いことに夜8時を過ぎると営業している店がほとんどなかった。雨の中をさまよった末に、ようやく営業している年季の入った小さな茶餐廳を見つけ、夕食を注文した。ソーセージがのったピリ辛のラーメンに、目玉焼きとトーストが出てきた。


美味しくラーメンを食べていると、ふと店の床が目に入った。自分の目を疑うほど巨大な白いアルビノのゴキブリが通り過ぎていくところだった。普段なら悲鳴を上げる場面だが、あまりにお腹が空いていた上に、不思議と悟りの境地に達していたため、「こんなものまで見ることになるとは」と、淡々と食事を平らげた。
食事を終えて外に出ると、相変わらず雨が激しく降り続いていた。明かりの灯る高層マンションを見上げると、建物の中央がぽっかりと空いた設計が目に留まった。香港では山から下りてくる龍が通る道を塞がないよう、建物の中央に空間を作るという風水の話を思い出し、雨の中のビル群を静かに眺めていた。

ホテルに戻り、1階のパブに席を取った。一日中雨に打たれて寒気がしていたが、冷たいクラフトビールに揚げたてのフィッシュ・アンド・チップスを合わせると、至福の安らぎが訪れた。サクサクの白身魚のフライにレモンを絞り、タルタルソースをたっぷりつけて食べながら、濡れた服を乾かした。

近くの店に立ち寄り、食べ物と一緒に雨をしのぐ傘を買った。お会計をしてレシートを確認すると、思ったより金額が高くて驚いたが、よく見るとビニール傘にディズニーのキャラクターが描かれたカラフルなディズニー傘だった。著作権料のせいかなと、思わずクスッとしてしまった。旅行中ずっと使い、日本に持って帰ってきた今でも大活躍している。

サヨナラ、サンダル。ミシュラン牡蠣粥の温もり
翌朝も空は無情に土砂降りの雨を降らせていた。今回の旅行のために思い切って新調したライトブルーのエルメスのサンダルは、道路の激しい雨水と水たまりに完全に水没し、わずか一日で使い物にならなくなってしまった。ぐっしょり濡れた足を引きずりながら、街へ繰り出した。

湾仔(ワンチャイ)のオフィス街の真ん中を通りながら、華やかな広告で覆われたトラムが通り過ぎるのを眺めた。雨に濡れた道路を静かに走る2階建てトラムは、雨の香港ならではの叙情的な雰囲気を引き立てていた。

寒さに震えながら向かったのは、ミシュランのビブグルマンに何度も選ばれているお粥専門店「Trusty Congee King(靠得住)」だ。窓ガラスにびっしりと貼られたミシュランのステッカーと、壁を飾る数々の盾が、実力店であることを物語っていた。


大ぶりの牡蠣がたっぷり入った熱々のお粥を注文した。スプーンでスープのようにすくい、口に運んだ瞬間、あまりの美味しさに夢中で器を空にした。海の香りが広がる牡蠣の風味と、濃厚なお粥の温かさが鳥肌が立つほど美味しかった。

ホットとアイス、そして路地裏でのささやかな発見
香港旅行でミルクティーは外せない。疲れた体を癒すため、カフェに入って温かいミルクティー(ホット)と冷たいミルクティー(アイス)を同時に注文した。ほろ苦い紅茶と濃厚なエバミルクが調和したコクのある味わいが口いっぱいに広がった。


ミルクティーと一緒に、こんがり焼けたパイナップルパンと、甘い練乳がかかったパンを注文し、のんびりとデザートタイムを楽しんだ。外はサクサク、中はふわふわのパンに冷たいバターが溶け込み、甘じょっぱい完璧なハーモニーを生み出していた。
カフェを出て路地を歩いていると、紫色の藤の装飾が美しく施されたグリーンショップを見つけた。普段から花屋を見かけると素通りできない性分なので、思わず立ち止まり写真に収めた。

そびえ立つ高層ビル群の真ん中にある、豪華な噴水広場も散策した。都会の真ん中で静かに吹き出す噴水を眺めながらしばし一息つき、香港ならではの洗練された近代建築の美を楽しんだ。

スーパーマーケットに立ち寄ると、棚に臭豆腐の瓶詰めが並んでいるのを見つけた。ガラス瓶で密封されているにもかかわらず、独特の強烈な臭いが瓶を通り抜けて漂ってくるような錯覚を覚えるほど、圧倒的な存在感を放っていた。

去る時に限って晴れた空と、小さなアヒル
旅行中ずっと雨だったのに、空港へ向かう車内で外を見ると、嘘のように雨が止み、とても爽やかな天気になった。帰る頃になって晴れていく空を見上げながら、「人生って本当にこういうものだよな」と思わず笑ってしまった。

旅行中ずっと雨だったのに、帰る頃になって快晴。人生ってそんなもの。
空港に到着し、免税店を回っていると、可愛らしいドナルドダックのぬいぐるみを見つけた。ずぶ濡れになった服や、ダメになってしまったサンダルの思い出を胸に、手のひらサイズの小さなアヒルを連れて帰路に就いた。雨に濡れて大変なことも多かったけれど、その分、強烈な温もりと美味しさを刻んでくれた香港旅行だった。

